人生の目標がはっきりしていて、熱心に取り組んでいる人。魅力的ですね。
一方で、人生の目標といわれてもなんだかピンとこない。「あなたの夢は何ですか?」なんて訊かれたら、なんだかモゴモゴしてその場限りのテキトーな発言でごまかしてしまう。。。そんな人もいますよね。
「自分の夢はこれです」「どうしてもこれがやりたいし成功したい」そうはっきり言える人がまぶしくて、うらやましくて仕方ない。どうして自分には情熱を持てるものが無いんだろう。自分ってダメだな、そう思っている人もいるでしょう。
でも、それって本当ですか?みんながみんな人生の目標を持ってトライしてるのでしょうか。はっきりこれ!と言える夢がないのっていけないことなの?
結論からいうと、ぜんぜんダメじゃないです。そういう生き方があるってだけのことです。
今回は「これ!」という目標が見つからず、ひとつのことに対して情熱が持てない。そんな自分ってどうなんだろう?やっぱりダメなのかな?、に対する、ひとつの回答になりうることを書いていきます。同じ不安を感じている人が、少しでも楽な気持ちになってくれたらうれしいです。
邁進する目標があるって、ステキなことです。
目次
ひとつのことをコツコツやる人がえらい、という空気
昔から、目標に向かって懸命にがんばる人は称賛されてきました。スポーツ選手やアーティストなど、子どもの頃からの夢を追い続けてかなえた人はまぶしいですね。わかりやすい夢でなくても、好きでずっと続けてきたことが実を結ぶのは素晴らしいことです。
しかし、わたしにはそんな夢や目標はありませんでした。夢とか目標とか訊かれても「困った・・・」と思いながらやり過ごしてきました。「人生の目標がはっきりしていないことは、人間としていまいち」だと思っていたからです。
・・・というよりむしろ、やってみたいことがあり過ぎてひとつになんて絞れない!あれもこれも興味ある!そして、なんだかどれもできそうな気がする・・・。
とはいえ、気になることに片っぱしから挑戦しても、目標や夢になるまでは続かない。そしてまた次のことに目が向いてしまう。周りからは「飽きっぽい」ひどい時には「多芸は無芸」なんて言われてしまう。それでも、わたしはそんな人生を生きています。50代になった今でも。
わたしがキャリア選択をしなければいけなかった30年ほど前は、転職は今ほど普通のことではありませんでした。ひとつのことを選ぶとそれ以外は選べない風潮がありました。ひとつのことにコツコツと取り組むことが当たり前で、コロコロと仕事を変わったり、興味の対象を移すことは「大人として落ち着いてない」という目で見られていました。
なので、なかなかひとつのことに落ち着かない自分のことを、うっすらダメ人間なんだろうなと思っていました。仕方なくひとつのことを無理やり決めたあと「やっぱりやめた」と言うことにとても抵抗があり、本当はやめたいのにやめられない状況に陥ったりもしました。
今でこそ、「ひとつのことだけでなくいろいろできる人はカッコいい」という価値観が定着してきましたが、その頃はまだ「一貫性が無い、ただの移り気」だったのです。
ビジョン型と価値観型
夢や目標、という観点については、「ビジョン型」「価値観型」という2傾向があるといいます。
わたしはある勉強会で「夢や目標ということばにピンとこないし、むしろ苦しい」と打ち明けたところ、講師の先生から教えていただきました。もともとは、コーチの平本あきおさんが提唱している考え方で、簡単にいうと次のとおりです。
ビジョン型とはどんな人?
5年後、10年後の自分を想像すると、ワクワクしてやる気が出る
価値観型とはどんな人?
将来のことより、今していることが自分の価値観に合っているかどうかが大事
この考え方からすると、わたしは完璧に価値観型だといえます。夢や目標なんていうことばには、正直うんざりするし、ちっともワクワクしません。むしろ縛られている気がして息苦しくなります。
「この仕事がしたい!」ではなく「こういう日々を送りたい」気持ちが強いので、派遣の仕事を選ぶときも業種や職種にこだわりがありません。だから、周りから見ると「一貫性が無い」ように見えるのですね。ただ、選ぶ仕事の後ろには、共通する価値観があることは感じています。それは、何の仕事をするか、だけでなく、どう働くのか、という価値観も含みます。
ビジョン型か価値観型かは、はっきり2つに分かれるものではないし、どちらが優位というものでもなく、単純にこういう傾向がある、というだけのものです。この考え方を知ってから、だいぶ自分について考えるときの重荷が減りました。「別にダメなわけじゃなかったんだ」と気づいたときの安心感といったら!
ジャックハンマーとハミングバード
もうひとつ、最近知ったのが「ジャックハンマー」と「ハミングバード」という2つの傾向です。
これは、作家のエリザベス・ギルバートのことばで、いろいろなところで紹介されています。わたしは、Podcastの番組「The Lavendaire Lifestyle」で引用されたのを聴いて知りました。
世の中には2種類の人間がいる。
ジャックハンマー(jackhammers)とハミングバード(hummingbirds)。
※ジャックハンマーとは、日本語で言うと手持ちの削岩機のこと。硬いものに穴を開けるドリルのことですね。
※ハミングバードとは、ハチドリのことです。日本では見ることができませんが、北米ではおなじみの小さな鳥です。
ジャックハンマーは、ひたすら情熱を追い求め、硬い岩に穴を開け続ける。脇目もふらず人生が終わるまで自分の目標に向かって突き進む。
一方、ハミングバードはまったく異なる人生を歩む。花から花へ、木から木へ、野原から野原へ、あれやこれやをやりながら跳び回る。そして、最後には信じられないほど豊かな世界観を作り上げる。異なる世界から世界へ影響を与え続け、ひとつのところで学んだことを次のフィールドに持ち込み、またそこで得たものを次の世界で開かせて、文化を融合し、常に新しい視点を持ち続ける。。。
オプラ・ウィンフリーのスーパーソウルセッションで話したものが、YouTubeにアップされています。「あなたの情熱は別のところにある」というタイトルがついていますね。
エリザベス・ギルバートさん本人は、自分のことをジャックハンマータイプと言っています。長年ウェイトレスをしながら書き続けたものの、毎日届くのは不採用の手紙だけ。それでも書くことを続けて、ついには人気作家となる・・・という、まさにひとつのことに情熱を持って突き進み、夢をかなえた人ですね。
でも、「あなたのようにひとつのことに情熱を持てない自分に、劣等感を感じる」と言われたことがきっかけで、違う人生の送り方をしている人がいることに気が付いたとか。
アメリカにも、ひとつのことに情熱を持てない、人生の目標が見いだせない自分にストレスを感じる人がたくさんいるってことなのでしょうね。
目標が定まらないのではなく、定めない。ただし自分の価値観には常に敏感でいる
このふたつの考え方、「ビジョン型と価値観型」「ジャックハンマーとハミングバード」を知ってから、価値観型でありハミングバードであるわたしは、人生の目標や夢がないことに引け目を感じなくなりました。
目標が定まらないのではなく、あえて定めていなかったことに気づいたからです。おそらく、誰もが人生の目標を決めなければいけない世の中ならば(その傾向はありますが)、わたしの人生はおそらくそこで終わってしまうのでしょう。ただ自分の価値観を追い求めて、違うフィールドを渡り歩く、それがわたしの生き方なのです。
みんながみんな人生の目標を持って生きているなんて幻想
わたしと同じように、目標がわからない、夢なんてないという人も、目標や夢がある人とは別の生き方をしているというだけです。どちらがより良い生き方か、など比べることではありません。
「まだ若いのに夢や目標が無いなんて!」「5年後、10年後の自分の姿なんて思い描けない」「エントリーシートに何を書いたらいいのかわからない」と悩んでいる就活生のみなさんにも、声を大にして言いたいです。
全員が目標や夢を持ってるなんて嘘だよ。見つからなくたって大丈夫!無いものを無理やり探しに行ったってつらいだけだし見つからないよ。「目標がない人間なんてダメだ」と言われたら、「そんなこと言ってるあんたらがダメだ」と言ってやってください。実際には言えないと思いますが・・・。正直、そこを見抜けない採用担当者は未熟だと思います。
自分が間違っているのではない、自分はダメではない、ということだけでもわかっていると安心なのではないかと思います。
人生の目標がない。ひとつのことに情熱が持てないってダメ? まとめ
今回は「これ!」という目標が見つからず、ひとつのことに対して情熱が持てない。そんな自分ってどうなんだろう?やっぱりダメなのかな?、という不安について書きました。
では、内容をまとめます。
人生の目標、明確な夢がある人
あなたはビジョン型、ジャックハンマーです。そのまま突き進んで!
人生の目標と言われてもピンとこない人
あなたは価値観型、ハミングバードです。自分の価値観を大切に毎日を生きましょう
今回2種類の傾向について書きましたが、パキッとふたつに分かれるわけではなく、もちろん両方の要素を持ち合わせている人もいますしね。
大切なのは、どちらかが優れているわけではなく、それぞれ違う視点で人生を作り上げているということ。ひとつのことを深く掘っても、いろいろなことを浅く掘っても、掘った量はどちらも変わらないのです。そして、どちらの生き方であっても、人生に満足することはできるのです。
勉強会や就活で目標や夢を答えられず、引け目を感じたり気まずくなったりする人が少しでも減りますように・・・。
※文中の訳は、筆者による意訳です